(穴を開ける)と一口に言っても、穴を開ける材料の材質、厚み、穴の深さ、サイズ、許容公差、そして、ドリル、ステップドリルの種類や穴をアッける為の機械、穴を開ける対象物の用途によってそのやり方や仕上がりは大きく変わります。
中でも(ドリル)と(ステップドリル)という聞き慣れない名前の工具は、形状も使い方も全く異なるため、正しい選び方を知っておかなければ作業効率を大きく損なうことになります。
この記事では、その違いはもちろん、現場でどう使い分けるべきかを、プロの目線から徹底的に解説します。
穴開け作業の精度とスピードを劇的に変えたい方必見です。
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左)センターポンチ、(中)ショートドリルビット、(右)ステップドリル
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ドリルとは?基本構造と特徴を理解する
ドリルは一般的に最も使われている穴あけ工具で、その形状は円錐状の先端に2枚の刃が回転して穴を掘り進めます。主に金属や木材、プラスチックなど多様な素材に穴を開ける事が出来、様々なサイズが展開されているため、汎用性が高い工具です。
ドリル使用時の注意点とコツ
Q – 1 ドリルの基本構造はどのようになっていますか?
A – 1 ドリルは刃先、シャンク、センター部分で構成されており、先端の刃が回転して材料を切削します。
刃先は材料に食い込み、シャンクがドリルチャックに固定されます。
ドリルのシンニングが良好な場合は、ドリルのセンター部分の穴の位置決めのが確保され、高精度の穴あけに欠かせません。
シンニングとは、ドリルの刃先の交差部分の切れ刃が無い部分の交差部分に切れ刃を作り、先端を点あたりにすることをシンニングと言います。
Q – 2 ドリルはどんな材料に穴を開ける事が出来ますか?
A – 2 金属全般、木材、プラスチックなど多様な素材の穴あけに使用できます。
穴を開ける対象物(ワーク)の材質や用途に合わせたドリル選びが重要です。
Q – 3 ドリルの回転速度は作業にどう影響しますか?
A – 3 適切な回転速度でないと刃の摩耗や損傷が早まり、加工面が粗く、開けた穴も大きくなりやすいです。
穴を開ける対象物(ワーク)の材質や、ドリルの材質、種類、穴を開ける道具により、ドリルの切れ刃の寿命に影響があるので、最適な回転速度と送り、切削油は重要です。
ドリルで穴を開けていき、穴がワークを貫通する時にドリルがワークに嚙み込む事が有るので、卓上ボール盤のテーブルにワークを固定する事もケガの防止に繋がります。
ドリル、ステップドリルでワークにあなを開ける時に回転速度の変更と切れ込みの速度、力加減、安全性(ワークの固定)は、ドリルプレスが楽で容易にできます。
穴を開ける速さを送り速度と言います。
Q – 4 ドリルの刃の寿命を延ばすには?
A – 4 適切な切削条件(回転数や送り速度、押す力加減、)切削油の使用、定期的な切れ刃の再研磨のメンテナンスが重要事項です。
無理な負荷や高速回転は刃の摩耗や刃こぼれを招きます。
Q – 5 小径ドリルの注意点は?
A – 5 工具剛性が低いためドリルがタワミやすく、切粉(切削した金属片)の排出も大きな径のドリルよりも困難な為に、ドリルが折れたり、ガリガリガリと言うようなノイズが出ます。
送り速度(切り込み量や押す力)を少なく弱めにし、ドリルをワークの上面まで揚げ、また切り込み、(ステップ加工)また上げるを数回から数十回繰り返し、穴を開けると切粉の排出が簡単に出来ます。
Q – 6 ドリルの材質にはどんな種類がありますか?
A – 6 高速鋼(HSS)、コバルト鋼、超硬チップ付きなどがあり、コーティングの有無も切削性能に影響します。
用途に適した材質が選ばれます。
ハイス(HSS)に比べコバルトハイスは粘りがあり、硬く、耐摩耗性も優れている為に、好んでコバルトハイスのドリル、ステップドリルを使用しています。

矢印は再研磨したコバルトハイスドリル
ステップドリルの用途は?(たけのこドリル)
ステップドリルは材質の薄い金属板やアルミ板、プラステック等を加工する際に大きなメリットがあります。段階的な刃形状によって穴径を自在に調整できるため、下穴から最終径までの加工を複数の工具交換なしで行え、作業時間とコストを大幅に削減できます。また、面取り効果も備えているのも特徴です。
ステップドリルが適した用途とは?
Q – 1 ステップドリルとは何ですか?
A – 1 刃先から段階的(たけのこの様な形状)に径が大きくなる形状のドリルで、1個のドリル加工で転属した複数の異なる大きさの穴径を開けれる特徴のあるドリルです。
特に薄い金属板やプラステックなどの穴あけに適合します。
Q – 2 ステップドリルの主な用途は?
A – 2 薄い金属板の穴あけ、穴径調整、下穴から面取りまで効率的に行い、現場等で大変重宝されています。
複数のドリルを使わないので、取り付け取り外しの時間が省け、作業短縮に有効です。
Q – 3 ステップドリルの使用に制限はありますか?
A – 3 厚みのある材料や硬い金属には向かず、深い穴加工や広い径にも限界があるため、適材適所での使い分けが必要です。
例 – ステップドリルで穴を20回開けると、先端の部分は20回穴を開けるので、大きな径よりも先端の方が摩耗が激しくなります。
Q – 4 ステップドリルで穴あけ時の注意点は?
A – 4 材料表面にポンチなどで予め印をつけること。ステップの径の長さが素材の厚さに合っているか確認し、貫通時は慎重に操作します。
Q – 5 ステップドリルが効率的に使える理由は?
A – 5 一本で複数径の穴を加工できるため、工具交換の手間や時間が削減され、現場効率が大幅に向上します。
ホルソーでφ19mmからφ23mm、φ33mmに穴を開けなおすのは、手間がかかり簡単ではありませんが、ステップドリルは穴の拡大が簡単に出来ます。
Q – 6 ステップドリルの材質とコーティングは?
A – 6 一般的に高速鋼製やコーティング付きがあり、耐摩耗性を高めることで寿命と加工品質を向上させています。
使用者の使用法や使用用途、各メーカーの商品により切れ味や耐摩耗性にバラツキがあります。

ちょこおさん、回転すしの皿が乗るステンレス薄板のコンベアの鉄板に最後の穴を開けようとしているんですが、通常のステンレスよりも硬くてドリルの先端が損傷してしまいました。
同サイズのドリルの予備も持って来てませんし、店のオープンまで時間がありません。

ワーン、今晩お寿司が食べられないの?

わしの茶碗蒸しとイカの握りが。

電造さん、僕のステップドリルで穴を開けてください。
早くプリンとお新香巻きが食べたいんだ。

電造君、3mmのドリルで切削油を塗布しながら下穴をあけて、次に金ちゃんのステップドリルを低回転で切削油を塗布してステップドリルの3段目で穴開けを止めてください。
高速回転は、ドリルを痛めるので低速回転から中速回転で穴を開ける事が重要です。
(高速回転にしがちなのですが、刃物の損傷や摩耗を考慮しながら作業してます)

わ~簡単に穴が開いたよ。
寿司が食べれる、イクラとウニの軍艦巻きだー‼

ドリルで下穴を開けた後に、ステップドリルで穴を大きく開けていくと楽に穴が開くし、ステップドリルの先端の摩耗も軽減できるから、この穴開け方法は、ステップドリルの寿命を延ばすコツなんだよ。

ドリルと色々な種類のステップドリル
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ドリルとステップドリルの使い分けポイントとは?
よくある誤解として(ステップドリルは万能)と考えられがちですが、実際には素材の厚みや穴の精度、仕上げにより使い分けが必要不可欠です。例えば深穴や高精度な円形穴には通常のドリルが有利。一方、薄板の多穴加工やプラスティック薄板加工ではステップドリルがスピード面で優れます。
ドリルとステップドリルの違いを考慮して、最適な選び方
Q – 1 ドリルとステップドリルの違いは?
A – 1 ドリルは単一径の穴を開け、幅広い材料に適合し、ドリルを変える事で、0.1mm単位で穴の大きさが変えられます。(ドリルのセット内容によりサイズは異なります)
ステップドリルは段付加工で複数径を一回のドリリングで加工が可能です。
用途に応じて使い分けが必要です。
Q – 2 どんな状況がドリルの穴あけに向いていますか?
A – 2 3~4mm以上の厚い材料や深穴、高精度な真円穴加工が求められる場合は通常ドリルが適しています。
Q – 3 ステップドリルはどの様な作業に向いていますか?
A – 3 薄板の穴あけや多段階穴径を効率的に仕上げたい場合に最適です。
面取りやバリ取りも兼ねて穴をあけます。
硬質プラスティックの穴あけ加工にも向いてます。(プラスティックのカケが少なく、穴の貫通時にプラスティックが割れにくかったりします)
Q – 4 工具の交換頻度は作業にどう影響しますか?
A – 4 頻繁な工具交換は時間ロスを招くため、ステップドリルの使用で効率化が向上しますが、作業内容に応じてドリルとステップドリルの使い分けが重要です。
Q – 5 コストパフォーマンスの観点は?
A – 5 ステップドリルは中、高単価(メジャーなメーカーのセット販売等)になる傾向がありますが、交換頻度削減でコスト低減に寄与します。
普通に使用する単品ドリルは低、中価格帯になる傾向がありますが、ドリルの材質や使用用途により多品種なドリルがあり、中には、高価格帯の商品もあります。
Q – 6 耐久性や摩耗を最小限にする方法はありますか?
A – 6 ドリルは簡単に再研磨が可能で耐久性もありますが、ステップドリルは再研磨が難しく切れ刃が複数あるので、慎重な使用が必要になります。
例 – ステップドリルでステンレスの2.3mmの薄板にφ20mmの穴を開ける時に4,000回転程の回転数で、切削油も使用せずに、乾式穴開けだと、切れ刃の摩耗や損傷を避ける事が出来ません。
穴が小さい程、回転数が早く、穴が大きくなるにつれ回転を落とすようにすると切れ刃の摩耗を防げるでしょう。

このドリルは、115本のコバルトハイスのドリルセットです
穴あけ加工における材質別の選び方
プラスチックや薄板などの柔らかい材質にはステップドリルが手軽に使えますが、厚みや強度のある金属材に対してはドリルの方が安定的に加工できます。こうした材質に応じた使い分けは加工効率と仕上がりの美しさを左右し、材料ロスの低減や再加工リスクの軽減にも寄与します。
材質別の穴あけの特徴
Q – 1 材質によりドリルの選び方は変わりますか?
A – 1 はい、合金鋼やステンレスなど硬い材料は耐摩耗性の高い工具が必要で、柔らかい素材は真鍮、プラステック等は刃形状の工夫が必要な場合もあります。
Q – 2 ステンレス加工に適したドリルは?
A – 2 コバルトハイスやコーティングドリルが推奨され、熱発生を抑えるため冷却切削油、又は切削油、切削条件の最適化も重要です。
Q – 3 アルミの穴あけのポイントは?
A – 3 軟質材なので切りくず詰まりなどに気を付け切削油を使用すると効果的です。
全ての金属の穴あけ加工は、適切な回転速度と送り(穴を開ける速度)、潤滑油、切粉の除去で仕上がりの向上が期待できます。
Q – 4 プラスチック素材に向く工具は?
A – 4 アクリルやプラステックの薄物の穴あけ加工は、ステップドリルが適しており、穴あけ時の割れやバリの発生を抑えつつ段階的な穴開けの直径調整が可能です。
Q – 5 厚みのある金属にはどちらの工具が優れますか?
A – 5 厚みが4ミリ以上の金属の穴あけは、通常のドリルでは安定した加工が出来、穴の精度や深穴加工の管理が容易です。
Q – 6 材質ごとの切削条件設定はどうすればいい?
A – 6 切削速度、送り速度、潤滑油の使用など材質特性に合わせて調整し、工具寿命と加工品質を最適化します。
ステンレス、難削材 150~680回転
アルミニウム 1000~2500回転
プラステック アクリル 1500~2000回転
上記の回転数は、加工方法の違い、ワークの材質の違いドリル、ステップドリルのサイズ等により回転数は大きく異なります。
薄板鉄板にφ10.0mmの穴をドリルで開ける場合に、木の板の上にワークを置き、左手でワークを抑え持ち、ハンドドリルを右手に持ち、穴を開ける場合は、穴が貫通する時にドリルがワークに食い込みワークが回転しケガをする恐れがあります。
穴貫通の前に送り速度を弱め、ワークを固定するなどの安全対策が必要です。

ドリルの切れが悪くなった物は、両刀グラインダーで再研磨して使用しています
トラブル回避とメンテナンスの極意
穴あけ作業では工具の摩耗や損傷、材料の変形といったトラブルが発生しやすく、未然に防ぐことが品質維持と長期間の安定稼働に不可欠です。適切なメンテナンスと定期的なチェックを行うことで、工具寿命が延び、加工精度の低下を防げます。
安全で長持ちする工具管理のポイント
Q – 1 ドリル、ステップドリルの摩耗サインは?
A – 1 穴あけ時間の長期化(送り、切り込む力が以前よりも必要)、加工面の粗さ増加、異音や振動の発生などが摩耗の典型的サインです。
Q – 2 ドリル、ステップドリルの寿命を延ばす方法は?
A – 2 刃物を落とさない、硬いものにぶつけない、適正な加工回転数と送り切削油の塗布が必要です。
使用後は特に刃物の形状を確認し、適正な場所に保管しドリルとドリルがぶつかり合わないようにし、定期的な手入れが寿命を左右します。
Q – 3 トラブル発生時の対処法は?
A – 3 切削条件見直し、刃の再研磨、設備の点検など、安全確保の徹底で再発防止に努めます。
Q – 4 工具の保管環境は重要ですか?
A – 4 湿気や衝撃を避ける事が重要で、保管中の錆や破損を防ぎ、工具の寿命と性能を維持するために非常に重要です。
使用終了時に刃先の確認をし、次に使用する時に備えましょう。
Q – 5 刃先の再研磨はどうすればよいですか?
A – 5 ダイアモンドヤスリや両刀のグラインダーを使用するか、ドリルの再研磨機を購入する、専門業者に再研磨を依頼する方法があります。
Q – 6 再研磨の頻度はどのくらいが望ましい?
A – 6 使用頻度や加工条件にもよりますが、目視で切れ刃が丸く摩耗したりした場合は、速やかに再研磨が必要です。
極度の摩耗、刃先の異常破損がある場合は、早期発見と防止対策、適応回転数、切削油の使用、下穴を開けた後に任意のサイズの穴を開ける、ドリルの材質を変えるなどの対応が必要になります。
加工対象物、ワークの支障が無い所を普通のヤスリで少し削り、他の材料と削れ具合の硬さを比べ、ワークの硬度(硬さ)を確認するのも大事な確認方法です。
柔らか材料はヤスリがかかる(削れる感じ)
硬い材料はヤスリがかからない(ヤスリが滑る感じ)
穴の開け初めに、あれ、何かおかしい、何か違うと思ったときは、手を止めワークの穴や、ドリル、ステップドリルの確認をし、何もなければ、再度加工再開しましょう。

ステップドリルも、コーティングの物とコバルトハイスのステップドリルを使用しています コバルトハイスの製品を見つけては購入しています
締めくくり
外出先の現場での穴開け作業は、ドリルとステップドリルの特性と適切な使い分けを理解することが不可欠です。
ドリルは多様な材質やサイズに対応し、高精度な穴あけが可能なのに対し、ステップドリルは一本で複数径の穴を効率よく加工でき、薄板などに強みがあります。
各工具のメリット・デメリットを踏まえ、材質や目的に応じて最適な選択を行うことで、作業効率や品質は大きく向上します。
適正な切削条件や工具メンテナンス、安全管理も高精度作業の重要なポイントです。
本解説を通じて、DIYの作業からプロの現場まで誰もが自信を持って工具を使いこなせることを願っています。
安全第一で、今後の作業に活用し、ぜひ役立ててください。
最終径がφ4.2mmの穴の場合、3.8mmで穴を開け、4.2mmで穴を開ける。
高精度が求められる穴の場合は、(百分の1ミリ等)ドリルで穴を開けその後にリーマ等の工具を使用し穴を開けていく事が推奨されます。